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表紙の人

Vol.254

2014年4月7日

河野 龍興さん

東芝アジア・パシフィック社水研究センターのセンター長

asiax (24)京都府出身。東芝アジア・パシフィック社水研究センターのセンター長として、シンガポール公益事業庁(PUB)と排水処理技術開発に取り組む。世界では約8億人が安全な飲料水を利用できないとされる。「少人数でできる範囲は限られているけれど、頭を使えば、効率的に解決できる可能性が広がる」と、環境科学者としての矜持を語る。

水ビジネスを戦略産業にし、名だたる企業や研究者が世界中から集まるシンガポール。研究開発拠点「ウォーター・ハブ」で、シンガポール公益事業庁(PUB)と水処理技術を開発する。世界の第一線の研究者が集まる環境はまさに「ワールドカップ」。「最新の研究をいち早く知り、キーパーソン達と会うことができる」刺激的な毎日だ。
京都府出身。1993年から東芝研究開発センターに配属、水素を吸う金属「水素吸蔵合金」の研究に従事し、2000年に現在、充電池「eneloop」に使われている「超格子合金」を発明した。博士号を取得後、水処理の研究開発は2007年から。きっかけは、環境汚染・砂漠化など世界各地で水不足問題が深刻化していたこと。当時から、シンガポールの話題は耳に入っていた。海水淡水技術や、下水を飲み水にまでする「NEWater」など、技術も研究環境も世界で先行していた。「面白そう。いつか行けたら夢みたい」と同僚たちと話し合った。「ワールドカップに憧れる少年の気持ちですね」。
「機能粉」と呼ばれる水処理材料で、排水から有害物質や有価値物質を回収できる産業用の排水処理装置を2011年に製品化。同年の展示会「シンガポール国際水週間(SIWW2011)」で紹介した。その場で興味を持ったPUBの幹部と交渉がまとまり、わずか8ヵ月後、2012年4月に「水研究センター」を当地に設立、共同研究が始まり、来星に至った。「日本では交渉を含め数年はかかる。決断の速さ、スピード感にしびれました」。共同研究成果は今年6月の「SIWW2014」で発表予定という。
目指すのは「早い・うまい・安い」。「私1人が井戸を掘っても、できることは限られている。でも頭を使って新しい技術・製品を創り出せば、効率よく問題を解決できる」。その可能性を科学に託す。
世界の巨人たちと切磋琢磨した頭脳を休めるのは、何といっても「食」の楽しみ。ローカルフードではバクテーや麺料理などが特にお気に入り。一方で、フランスやイタリアにも頻繁に足を延ばし美食を楽しむ。ただ、最高の料理は「妻の作る手打ちパスタ」。愛妻家の一面も見えた。

※河野さんの新連載「Dr.河野の寝耳に水の話」がスタートします。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.254(2014年04月07日発行)」に掲載されたものです。

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