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法律相談

2014年2月17日

Q.シンガポールで高級腕時計を販売したところ、消費者から引き渡して5ヵ月後に商品に欠陥があるとして返金を求められました。弊社では引き渡しから1週間以降の返金には応じないというポリシーを規定しています。消費者は法律があると主張していますが、本当ですか?

シンガポールの消費者保護法・レモンロー

レモンローをご存知でしょうか?あの酸味のなかに、ほのかな甘みがあるレモンです。もっとも、レモンに関する法律ではありません。正確には、Consumer Protection (Fair Trading) Act(消費者保護(公正取引)法)という法律が改正され、通称「Lemon Law」と呼ばれる欠陥品に関する消費者保護規定が追加されました。欠陥品のことを英語で俗に「lemon」と呼ぶことから、このような通称となっています。この改正法は、2012年9月1日より施行されています。なお、当事者が契約で合意しても、消費者保護法の適用を免れることはできません。

 

レモンローでは、売主が商品を引き渡してから6ヵ月以内に消費者が欠陥の存在を発見した場合、その欠陥は商品の引き渡し時点から存在したものと推定され、売主に対して欠陥の不存在についての立証責任が課されます。つまり、売主が責任を免れるためには、売主側が商品の引き渡し時点で商品に欠陥がなく、欠陥が引き渡し後に生じたことを証明しなければなりません。なお、引き渡しから6ヵ月経過後は、商品を受け取った時点で欠陥があったことを消費者側が証明する必要があります。

 

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レモンローはシンガポールの消費者に認知されており、返品や交換を求める際にレモンローを引用する消費者が増えていると報道されています(「More consumers invoke “lemon law” for defective goods」ストレーツタイムズ紙2013年4月1日付)。また、レモンロー施行後の1年間で、自動車の買主からの苦情は前年の同期間に比べて50%増加したという報道もありました(「Car complaints rise by 50% since ‘lemon law’」同2013年10月29日付)。特に高額商品の売主は、引き渡し時の商品状態を立証できるよう商品の写真撮影を販売業務の手順に組み込むなどの慎重な検討が必要でしょう。

 

では、具体的に消費者はどのような請求ができるのでしょうか。まず、①修理または交換の請求。消費者が選択した請求が不可能、あるいは不合理である場合は、売主は修理するか交換するかを選択できます。次に、②減額または返金の請求です。修理、交換が不可能であったり、これらに過大な費用がかかり不合理であったりする場合のほか、売主が合理的期間内に修理、交換を行わず、かつ、修理や交換ができなくても消費者に重大な不都合が生じない場合にも、消費者は減額または返金の請求を選択することができます。

 

レモンローでいう欠陥品とは、引き渡し時に、売買契約の明示または黙示の条件に従っていない物品のことです。黙示の条件に従っていないというのは、たとえば、商品の説明を考慮して、商品の状態や安全性、耐久性などが満足のいく品質ではないことを意味します。高級腕時計に傷があったり、防水機能を売りにしていたのに防水機能が十分継続しなかったりすれば、満足のいく品質ではないと判断されるおそれがあるでしょう。なお、あらかじめ売主が消費者に欠陥を知らせていれば、その欠陥について売主は責任を負いません。ただし、「現状有姿で引き渡す」という程度の記載では欠陥を知らせたことになりませんので、中古品を販売する際は特に注意が必要です。

 

さて、このレモンロー。事業者の方が噛みつくと、その名の通りかなり酸っぱく感じられるかもしれませんね。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.251(2014年02月17日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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