シンガポールのMRT(都市高速鉄道)で、高齢男性が若い乗客に席を譲るよう求めたところ、乗客が「May I Have a Seat(席を譲ってください)」カードを提示したことで状況が一変した出来事がSNSで話題となり、「見えない障害」への理解や公共交通機関での思いやりの在り方を巡る議論が広がっている。
目撃者によると、若い乗客は優先席付近に座っていたところ、高齢男性から席を譲るよう求められたが、そのまま座り続けたという。高齢男性は声を荒らげて非難したが、若い乗客は自身が携帯していた「May I Have a Seat」カードを示した。このカードは、外見では分かりにくい病気や障害、けが、妊娠初期などで席を必要とする人が利用できる制度である。最終的に別の乗客が高齢男性へ席を譲り、その後、別の利用者が若い乗客へ丁寧に席を譲ってほしいと申し出ると、若い乗客は快く席を譲ったという。
この出来事を受け、SNSでは「席を必要とする事情は外見だけでは判断できない」「席を譲ることは思いやりであり、強要されるものではない」といった意見が相次いだ。一方で、「高齢者への配慮も必要であり、互いに礼儀を持って声を掛け合うことが重要」との声もあり、公共交通機関でのマナーについて幅広い議論となっている。
シンガポール陸上交通庁(LTA)は2019年から「May I Have a Seat」制度を導入し、外見からは分かりにくい事情を抱える利用者にカードやストラップを配布している。制度は、障害や持病の有無を周囲に詳しく説明することなく、必要な支援を受けやすくすることを目的としている。
今回の出来事は、一見健康そうに見える人でも席を必要とする事情があることを社会に改めて認識させる契機となった。高齢者への配慮とともに、見えない障害や健康上の事情への理解を深め、互いを尊重する公共交通機関の利用マナーが一層求められている。
MRTで席を巡る口論が話題に 見えない障害への理解求める声広がる
