シンガポール人材開発省(MOM)が7月31日に発表した2026年第2四半期(4~6月)の雇用市場速報によると、総雇用者数は前期の9,400人増から1万700人増へ拡大し、雇用市場は引き続き堅調に推移した。一方、人員整理(リトレンチメント)は4,500人と前期の3,830人から17.5%増加し、2020年第4四半期以来、約5年半ぶりの高水準となった。
雇用増加は主に建設業と製造業における外国人労働者の増加がけん引した。一方、シンガポール人および永住権(PR)保持者の雇用増加は前期より鈍化したものの、公共サービスや生活関連サービスなどを中心に増加を維持した。失業率は6月時点で2.0%と低水準を維持し、住民失業率、国民失業率も大きな変化はみられなかった。
人員整理の増加についてMOMは、景気後退による一律の人員削減ではなく、企業の事業再編が主な要因であると説明している。特に海外需要への依存度が高い産業で増加が目立ち、世界経済の先行き不透明感や貿易環境の変化を受け、事業構造の見直しを進める企業が増えているという。
一方で、求人需要は依然として底堅く、政府は雇用市場全体としては引き続き安定しているとの見方を示した。企業の採用姿勢は慎重になりつつあるものの、デジタル化やAIの導入に伴う新たな人材需要は続いており、職種によって明暗が分かれる状況となっている。
世界経済の不透明感が続く中、シンガポールの雇用市場は雇用創出を維持しながらも、企業の構造改革が進む局面に入っている。今後は景気動向に加え、AIやデジタル化への対応力が企業、労働者双方にとって重要な課題となりそうである。
雇用は増加も人員整理は5年半ぶり高水準 シンガポール雇用市場に慎重姿勢
