シンガポールで、高齢のベーカリー店員の発言を巡るSNS投稿が大きな議論を呼んでいる。発端は、注意欠如・多動症(ADHD)の子ども2人を連れた母親が、商業施設ビボシティ内の「ヤマザキベーカリー」を訪れた際の出来事だった。子どもたちが陳列されていたドーナツを手に取り、会計前に一口食べてしまったことに対し、高齢の女性店員が「子どもを責めるのではなく、親のしつけが悪い」と中国語で発言したという。母親はSNSで店員の写真とともに体験を投稿し、ADHDへの理解と配慮を訴えたが、結果的には店員を擁護する声が相次ぐ展開となった。
母親は投稿の中で、すぐに店員へ謝罪し、ドーナツ代を支払う意思を示したと説明。また、ADHDの子どもを育てる日常には、絶え間ない見守りや療育、感情のコントロールなど、多くの苦労があることを紹介し、「思いやりを持って接してほしい」と呼びかけた。しかし、投稿には店員の顔写真が掲載されており、多くの利用者は「思いやりを求める一方で、高齢の店員をネット上でさらす行為は矛盾している」と批判した。
コメント欄では、「店員は子どもがADHDであることを知るはずがない」「ADHDは行動の理由にはなっても、責任を免除するものではない」「親として適切に子どもへ教えることも重要だ」といった意見が目立った。また、「店員も生活のために働く高齢者であり、事情を知らずに発言しただけかもしれない」「母親が求める思いやりは店員にも向けられるべきだ」といった声も多く寄せられた。
一方で、店員の発言については「配慮に欠ける」「親にとっては深く傷つく言葉だった」と理解を示す意見もあり、発言そのものを肯定する声ばかりではなかった。しかし、今回の議論では、個人を特定できる写真をSNSへ掲載したことの影響を懸念する意見が大勢を占め、「一度の出来事で高齢の従業員を公に非難するのは行き過ぎだ」との見方が広がった。
近年のシンガポールでは、接客時のトラブルや公共の場での出来事を撮影し、SNSで公開するケースが増えている。一方で、ネット上で個人を名指しして批判する「オンライン・シェーミング(さらし行為)」への懸念も高まっており、今回の件は、障害への理解と共感の重要性に加え、SNS時代における情報発信の責任や、互いに思いやりを持って接することの大切さを改めて問いかける出来事となった。
ベーカリー店員へのSNS投稿に批判集中 「思いやりは双方に必要」と共感広がる
