シンガポールの老舗百貨店チェーン「メトロ(Metro)」は、パラゴン店とコーズウェイポイント店について、現在の賃貸契約が満了した時点で営業を終了すると発表した。同社は事業戦略の見直しを進めており、従来型の大型百貨店から、より柔軟で専門性の高い小型店舗や複合型店舗へ事業を転換する方針を打ち出している。閉店時期は各店舗の賃貸契約満了日に合わせるとしており、現時点では具体的な日程は公表されていない。
今回の決定の背景には、小売業を取り巻く環境の大きな変化がある。物価上昇による消費者心理の冷え込みに加え、オンラインショッピングの定着や消費者ニーズの多様化により、広い売り場を持つ百貨店の運営は年々厳しさを増している。メトロは、こうした市場環境の変化に対応するため、小売事業全体を見直した結果、従来の大型店舗モデルから段階的に脱却することを決めたとしている。
一方で、メトロブランドそのものがシンガポール市場から姿を消すわけではない。パラゴンのオーナーであるCapitaLand Integrated Commercial Trust(CICT)は、メトロが新しいコンセプト店舗としてパラゴンへの出店継続に関心を示しており、現在協議を進めていることを明らかにした。また、同社は既存・新規双方の商業施設オーナーと、新業態店舗の展開について協議を行っているという。
メトロは1957年にシンガポールで創業し、一時は国内各地で複数の百貨店を展開するなど、国内を代表する小売ブランドとして親しまれてきた。しかし近年は店舗の集約を進め、パラゴン店とコーズウェイポイント店が国内最後の大型百貨店となっていた。今回の事業転換は、一つの時代の終わりを象徴する出来事であると同時に、小売業界が「大型百貨店」から「専門店・体験型店舗」へと移行する流れを反映したものともいえる。今後は、新業態がどのような形で消費者の支持を獲得できるかが注目される。
老舗百貨店メトロ、パラゴンとコーズウェイポイント店を閉鎖へ 大型店舗から新業態へ転換
