シンガポール企業の採用活動や新規受注の伸びが鈍化し、多くの企業が事業拡大に慎重な姿勢を強めていることが、最新の企業景況感調査で明らかになった。景気は引き続き拡大基調を維持しているものの、世界経済の不透明感を背景に企業心理には変化が見られている。
調査によると、多くの企業は今後の売上や利益について依然として前向きな見通しを維持している一方、新規受注や採用計画は前回調査よりも慎重な内容となった。企業は将来の需要動向を見極めながら、人員増強や設備投資を進める姿勢を強めている。
業種別では、金融業が最も堅調な見通しを示したほか、卸売業、サービス業、運輸業も比較的良好な業況を維持した。一方、製造業などでは受注の伸びが鈍化し、世界的な需要減速や地政学リスクの影響を受けて慎重な経営判断が広がっている。
背景には、中東情勢の緊迫化や米中関係をはじめとする国際情勢の不確実性、世界的なインフレ圧力などがある。企業はコスト管理を優先しながら、必要な分野に限定した採用を進める傾向が強まっている。また、人工知能(AI)やデジタル化への投資は継続する一方、一般的な人員増強には慎重な姿勢が続くとみられる。
シンガポール人材開発省(MOM)も、今後は企業が採用や賃金引き上げに慎重になる可能性があるとの見方を示している。ただし、医療、金融、情報通信、サイバーセキュリティーなど成長分野では依然として人材需要が高く、労働市場全体が急速に悪化する状況ではないとしている。
専門家は、企業が今後数ヵ月は「成長投資」と「コスト管理」のバランスを重視する局面が続くと予想している。今回の調査結果は、シンガポール経済が底堅さを維持しながらも、企業が世界経済の先行きを慎重に見極める局面に入っていることを示しており、採用市場や企業投資の動向が今後の景気を左右する重要な指標となりそうである。
シンガポール企業、採用と受注が減速 先行き不透明感から慎重姿勢強まる
