シンガポールの賃貸住宅市場で、過去数年間続いた急激な家賃上昇が落ち着きを見せている。民間住宅市場では、新規供給の増加を背景に賃料の上昇ペースが鈍化し、一部地域では下落も見られるようになった。市場関係者の間では、これまでの「貸し手市場」から「借り手市場」への転換が進みつつあるとの見方が広がっている。
シンガポールでは、新型コロナ禍後の外国人駐在員や専門人材の流入拡大、住宅供給不足などを背景に、2022年から2024年にかけて賃料が急騰した。しかし2025年以降は新築コンドミニアムの完成が相次ぎ、市場への供給量が増加したことで需給が改善。2026年第1四半期の民間住宅賃料指数はほぼ横ばいとなり、一部では賃料の調整局面に入っている。
また、2026年には多くのHDB(公営住宅)が最低居住期間(MOP)を満了し、新たに賃貸市場へ供給される見通しである。これにより借り手の選択肢が増え、賃料交渉においても入居者側が有利になりつつある。専門家は、住宅供給の拡大が今後数年にわたり市場の安定化につながるとみている。
一方で、賃料水準そのものは依然として高い。中心部や人気学区周辺では堅調な需要が続いており、駐在員向け物件では高水準の賃料が維持されている。市場関係者は、今後の賃貸市場は急騰局面を終え、供給と需要が均衡する安定成長期へ移行すると予想している。日系企業にとっては、駐在員住宅コストの上昇圧力が和らぐ可能性があり、今後の市場動向が注目される。
シンガポール、家賃上昇が鈍化 借り手優位の市場へ
