2026年6月2日
シンガポール企業のジョホール移転加速 コスト削減とJS-SEZが追い風
シンガポール企業によるマレーシア・ジョホール州への生産拠点移転が加速している。食品・飲料業界では、ガーデニア、Yeo’s(ヨーズ)、タイガービールを製造するアジア・パシフィック・ブルワリーズ・シンガポール(APBS)などが相次いで生産機能の移管や人員削減を発表しており、その動向が注目されている。
専門家によると、シンガポール企業が製造拠点をマレーシアへ移す動き自体は新しいものではないが、近年はそのペースが加速しているという。背景には人件費や土地コストの上昇に加え、中東情勢の影響による物流・エネルギーコストの増加がある。さらに、ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)の税制優遇措置も企業の意思決定を後押ししている。
シンガポール製造業連盟(SMF)のレノン・タン会長は、この動きを「シンガポール企業による地理的最適化」であり、「シンガポールへの信頼低下を意味するものではない」と説明している。多くの企業は本社機能、研究開発、ブランド管理、物流統括などの高付加価値業務をシンガポールに残し、生産のみをジョホールへ移す戦略を採用している。
また、不動産コンサルティング会社オリーブ・ツリーのサミュエル・タン最高経営責任者(CEO)は、「東南アジアにおける製造業の経済環境を考えれば、ジョホールへの移転は極めて合理的な判断である」と指摘。ジョホールで低コスト生産を行いながら、シンガポール市場へ日々商品を供給できる体制が大きな強みだとしている。
一方で専門家は、企業進出の増加によりジョホールでも労働力や工業用地の確保競争が激化する可能性を指摘している。また、製造機能の海外移転が進みすぎれば、「Made in Singapore」のブランド価値が弱まる可能性もあるとの懸念が示されている。

