2025年12月12日
シンガポール第3四半期、リストラ増・求人減で雇用悪化
シンガポール人材開発省(MOM)が公表した最新労働統計によると、2025年第3四半期のリストラ件数は5,160件に増加し、前期(4,820件)から悪化した。背景には、景気減速、コスト上昇、企業の事業再編があるとみられる。
一方、求人件数は7期連続で減少し、今年第3四半期には7万3,600件となった。これは人材需要の鈍化を示しており、企業は慎重な採用姿勢を強めている。特に製造業、IT・通信、金融関連での求人減が顕著である。
失業率は総合で2.1%と安定しているものの、MOMは「表面上の安定の裏で労働市場の調整圧力が高まっている」と指摘。実際、リストラ理由として最も多かったのは事業再編・再構築(51%)で、企業が長期的競争力を確保するために組織を縮小・統合している状況が読み取れる。
さらに、リストラされた労働者のうち、約6割が専門・管理職(PMET)であり、高スキル層でも影響が広がっている。再就職までの期間も長期化傾向にあり、労働者にとって厳しい環境が続く。
MOMは今後について、世界経済の不透明感や地政学リスクを踏まえ、2026年に向けた雇用環境も弱含みが続く可能性が高いと見ている。一方、ヘルスケア、航空関連、グリーンエコノミーなど一部分野では人材需要が底堅く、転職希望者はスキルの再教育・再訓練が重要になると強調した。
求人の減少とリストラ増加が同時進行する中、今後の労働市場は企業・労働者双方にとって試練の局面となっている。

