2025年のシンガポールでは、転職する人の割合が前年差で低下した一方、転職した人の約6割が賃金上昇を実現したことが、シンガポール人材開発省(MOM)の統計で明らかになった。転職率は2024年の7.6%から2025年は6.2%へと下落し、雇用市場に「様子見」姿勢が広がっている実態が浮き彫りとなった。
特に25~29歳の若年層で転職率が下がっており、景気の先行き不透明感や企業の採用抑制が影響したとみられる。加えて、現在の職にとどまる「ジョブハギング(職場定着志向)」の傾向も強まっているという。
一方で、転職者の約60%が賃金増を得ており、動いた人にとっては待遇改善の機会が一定程度存在したことも示された。全体では名目賃金の上昇が続き、居住者(国民・永住者)の実質所得の中央値も前年を上回った。
転職者は減る一方で賃上げ機会は残るという構図は、安定志向の強まりと人材の選別化が同時に進んでいることを示す。今後の雇用の流動性は、景況感、インフレ動向、企業の採用方針に左右される見通しである。
シンガポール、2025年は転職減少も6割が賃上げ実現
