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年末の雨季、ラニーニャと負のIODが重なるも降雨量増は限定的か

 シンガポールでは例年12月から1月にかけて北東モンスーンの湿潤期となり、年間で最も降雨が多い季節に入る。この時期には1〜3回のモンスーン・サージ(北東からの寒気流入)も発生し、大雨や強風、気温低下をもたらすことが多い。2025年の年末は、これらに加えてラニーニャ現象とインド洋ダイポール(IOD)の負の位相が同時に重なる見通しである。
 
 ラニーニャと負のIODは、太平洋とインド洋の海面水温や気圧配置の変化に起因し、一般的に東南アジアでの降雨を増加させる傾向がある。しかし、気象庁(Met Service)は、これらがシンガポールの12月から1月の総降雨量に顕著な影響を及ぼす可能性は低いとしている。ラニーニャは、むしろ北東モンスーン乾季の2〜3月に wetter 条件をもたらしやすいとされる。また、負のIODも10〜11月の秋季中間期では降雨を増加させるが、年末の本格的な雨季には影響が小さいという。
 
 国立大学(NUS)のロス教授は「通常であればラニーニャと負のIODの組み合わせは11〜12月の降雨を強める要因となる」と指摘する一方で、Met Serviceは「今回のラニーニャは弱い可能性が高く、影響は限定的」と説明する。また、マッデン・ジュリアン振動(MJO)など他の気象要因が別途強い雨をもたらす可能性にも言及した。
 
 気温面では、ラニーニャは一般にシンガポールの高温傾向をやや和らげる効果があるとされる。しかし、気候変動により過去のラニーニャ期と比べても全体の気温は上昇しており、Met Serviceは「現在のラニーニャ年は1980年代のエルニーニョ年よりも高温である」と警告する。
 
 このため、2025年の年末は例年通りの雨季に加えて複数の気象要因が重なるものの、降雨量の大幅な増加は見込みにくく、一方で気候変動による気温上昇傾向は続くとみられる。