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社会

2025年11月17日

フィンテック人材、AIエンジニアなど専門職の需要急増

 シンガポールのフィンテック分野で、AIエンジニアやデータサイエンティストなど高度専門職の需要が急速に高まっている。シンガポール・フィンテック協会とPage Executiveが11月13日に公表した「Singapore Fintech Talent Report 2025」によれば、AI導入の加速に伴い専門スキルの確保が最重要課題となっている。
 
 同報告書は1,000人超のプロフェッショナルおよび14人の上級幹部への調査に基づくもので、求職者の90%が学士号以上を保有する一方で、企業側は学歴よりも人間的能力を重視していると指摘する。雇用主の92%がコミュニケーション力とチームワークを、85%が適応力と学習敏捷性を重視し、正式な資格を重要とする割合は8%にとどまった。
 
 同協会のタウィシ・シン副会長は「AIなどの技術進化とともに、ハードスキルとソフトスキルの両方が不可欠である」と述べている。
 
 また、同分野の約30%の企業が2026年に採用拡大を予定し、20%が契約・フリーランス枠の増加を見込むなど、変動の大きい経済環境下でも一定の楽観が示された。さらに21%の企業がリスキリング・アップスキリングに注力しており、求職者側でも23%がAI、データ分析、Excel上級講座などのオンライン学習を進めている。
 
 一方、給与期待と企業側の予算制約には大きなギャップがある。フィンテック従事者の3分の2が転職理由に給与を挙げる一方で、雇用主の70%は2026年の採用戦略がコスト最適化に左右されると回答した。ただし、従業員の67%が基本給の低下と引き換えに株式報酬を受け入れる意向を示しており、短期報酬から長期価値創造への志向もみられる。
 
 人材確保では、企業文化や目的意識、リーダーシップへの信頼が重要性を増している。84%の企業が競争力ある給与を、77%がハイブリッド勤務やキャリアパスを重視する一方、ウェルネス関連施策の有効性は30.8%に低下している。また、ハイブリッド勤務者の60%がオフィス出社増なら退職を検討すると答え、経営陣への信頼も43%にとどまった。
 
 Page Executiveのジョン・ゴールドスタイン氏は「次の成功は、デジタル革新と人間的洞察を融合し、信頼されるエコシステムを構築できる企業に訪れる」と述べた。

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