AsiaX

シンガポール航空ミラノ行き機内で男性死亡

 11月5日、シンガポール発ミラノ行きのシンガポール航空(SQ378)機内で男性乗客が急病により死亡した。機内には医師3名が搭乗しており、客室乗務員とともに約30分間にわたって心肺蘇生(CPR)を行ったが、男性は回復しなかった。
 
 当便に搭乗していた消化器専門医デズモンド・ワイ氏は、休暇中のフライト中に「医師の方はいませんか」という機内アナウンスを聞き、倫理的責任を感じて救助に向かったという。男性は機内後方で倒れており、客室乗務員がCPRを実施中だった。AED(自動体外式除細動器)も用意されていたが、瞳孔が開き脈や呼吸も確認できず、死亡が確認された。ワイ氏は男性の腹部に大きな肝臓の腫れを感じたことから、肝臓がんを患っていた可能性を示唆した。
 
 ワイ氏は「客室乗務員の応急対応は非常に的確で、AED操作にも熟練していた」と称賛。医療従事者3名とほぼ全員の乗務員が救命に関わったという。
 
 着陸後、ワイ氏らは警察に事情を説明。死亡診断は到着後の医療当局によって行われる予定とした。
 
 最も印象的だったのは、亡くなった男性の妻が涙ながらに「治療をありがとう」と感謝を述べた瞬間だったと、ワイ氏は語った。
 
 シンガポール航空は「お客様のご家族に深く哀悼の意を表するとともに、救命に尽力された医療関係者および乗務員に感謝申し上げる」との声明を発表した。同社は、機内での医療緊急事態に対応するための標準手順を整備しており、必要に応じて乗客の医療従事者にも協力を求めるとしている。