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ムスタファ・センター、オンライン販売開始

 シンガポールの人気ショッピング複合施設「ムスタファ・センター」が、長年の顧客の要望に応え、公式オンラインサイトを10月28日に開設した。取り扱い商品は約3,000点で、日用品や食品のほか、香水やチョコレート、インドの乳製品ブランド「アムル(Amul)」などの海外ブランド商品も並ぶ。
 
 ムスタファ・センターのマスタック・アフマド代表は、「多くの常連客が“自宅からも買いたい”と望んでいた。今こそその声に応えるときだ」と語る。1971年にカンベル・レーンで創業した同店は、現在シンガポール中心部サイド・アルウィ通りにある6階建ての店舗で、1日平均1万5,000人以上が来店する。
 
 オンライン販売では当初、全取扱商品のごく一部を掲載し、当面は即日配送に対応しない。約10人のスタッフが、店内6フロアから商品をピックアップして梱包・配送する「店舗兼倉庫型」モデルを採用する。配送費は150Sドル未満で10Sドル、150Sドル以上で無料。平均注文額は約200Sドルで、大型家電や食品のまとめ買いが多いという。
 
 マスタック氏は「他社より遅れての参入だが、採算を最優先にした。赤字覚悟の戦略ではなく、初日から利益が出る仕組みを取る」と強調。アイテム数は今後毎月約1,000点ずつ追加予定で、需要に応じて自社配送網や自動梱包設備の導入も検討する。
 
 専門家は「既存の在庫と店舗網を活用した現実的な第一歩」と評価しつつ、「注文数が増えるにつれ、物流効率やコスト管理が鍵になる」と指摘。コロナ禍で他の小売大手がオンライン化を進める中、ムスタファの遅い参入は「他社の失敗例から学び、より洗練された戦略で臨む好機」と見る声もある。
 
 顧客の反応も上々だ。2児の母で主婦のアデリア・マズランさん(34)は「自宅からムスタファまでは30分かかる。オンラインで買えるなら時間も手間も節約できる」と歓迎。一方で常連のミシェル・ロドリゲスさん(50)は「店の価格は安いが、オンラインの値段がどこまで魅力的か見極めたい」と話した。
 
 物理店舗で築いた信頼と安さを武器に、ムスタファ・センターはデジタル時代の顧客層拡大に踏み出した。