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AI時代でも有利に立つシンガポールのソフトウェア技術者

 人工知能(AI)の急速な発展により、世界ではソフトウェア技術者の職が脅かされつつあるが、シンガポールでは政府支援の強さと多国籍IT企業の集積により、影響を最小限に抑える可能性が高いと専門家は指摘している。
 
 テクノロジーコンサルティング企業Palo ITのシンガポール・香港マネージングディレクター、ユージン・ヤン氏は、「シンガポールはAIエージェントを統括する“AIオーケストレーション拠点”として東南アジアで台頭する可能性がある」と述べた。AIエージェントとは、人間の監督なしに自律的に学習・実行するボットのことであり、今後企業の注目分野となる見通しである。
 
 CBREのロヒニ・サルジャ氏も、「倫理設計や複雑なシステム統合には人間の監督が不可欠であり、ここにシンガポールの強みがある」と指摘。一方で、データラベリングなど人の目が必要な業務は引き続き低コスト地域で実施されるとした。
 
 人材サービス大手マーサーのラヴィ・ニッパニ氏は、企業はオフショアIT拠点を急いで削減すべきではなく、AI管理やシステム設計など高付加価値業務に転換させるべきだと述べた。
 
 シンガポールには約4,500社のテック企業があり、政府は2029年までにAI専門人材を15,000人育成する目標を掲げている。AIシンガポールが実施する「AIアプレンティスシップ・プログラム」は、多様な経歴を持つ人材をAI分野に送り出す取り組みで、卒業生の約60%が修了前に就職を決めている。
 
 求人プラットフォームNodeFlairによると、シンガポールのソフトウェア技術者は約8万〜10万人で、中央値月給は6,750Sドル。直近12ヵ月の給与水準は横ばいが予想されるが、AI関連スキルを高めた人材はより高い報酬を得る可能性がある。