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社会

2025年10月20日

スクート便の乱気流事故、原因は「レーダーに映らなかった嵐」

 2024年9月6日、シンガポール発・広州行きのスクート便(TR100)が降下中に乱気流に遭遇し、乗客1人と客室乗務員1人が重傷を負った。調査の結果、原因は機体の気象レーダーでは検知できなかった背後の嵐(ストームセル)だったことが明らかになった。10月4日付で発表されたシンガポール運輸省傘下の交通安全調査局(TSIB)の報告書によると、当時シートベルトサインは消灯しており、乗客の一部が席を立っていた。
 
 報告書は、乱気流が同日中国・広東省に上陸した台風ヤギ(Yagi)とは無関係で、局地的な嵐によるものだったと指摘。嵐は機体の後方にあり、機首に設置されたレーダーでは探知できなかったという。
 
 この事故を受け、スクートは悪天候下での運航ガイドラインを改訂し、離陸から巡航高度到達までと降下開始から着陸までの間はシートベルトサインを常時点灯することを義務化。また、乗客への着用喚起や乗務員の着席ルールを徹底し、2024年11月からは国際航空運送協会(IATA)の「Turbulence Aware」アプリを導入してリアルタイムで乱気流情報を共有する体制を整える。スクートは「安全は常に最優先事項」とコメントしている。
 
 一方、TSIBの同報告書では、セレター空港で2024年に2度発生した夜間離陸時の誤進入事故についても言及。いずれも滑走路の中央線ではなく右端を走行したまま離陸し、滑走路灯を損傷した。7月17日にはアリアンツ社のダッソー・ファルコン900EX機、10月6日にはラックスアビエーションのボンバルディア・グローバル6000機がそれぞれ被害を出した。
 
 TSIBは、夜間の視界不良や照明配置の誤認が要因と分析。滑走路中央の照明が未設置だったことや、タクシーウェイ(誘導路)の配置が視覚的錯覚を生んだ可能性を指摘した。
 
 空港を運営するチャンギ・エアポート・グループ(CAG)は、誘導灯の位置修正を2025年第4四半期までに完了する計画で、滑走路灯異常検知システムを2027年第1四半期に導入予定。さらに外来異物(FOD)検知技術の導入も検討している。空港総支配人のマイケル・リー氏は「安全は最優先事項。引き続き関係機関と連携し、安全基準を維持・強化していく」と述べた。

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