近年、シンガポールで詐欺被害総額が数十億Sドル規模に達していることを受け、政府は詐欺犯罪への刑罰を大幅に強化する方針を示した。10月14日に国会に提出された「刑法(雑則改正)法案(Criminal Law (Miscellaneous Amendments) Bill)」では、詐欺行為の実行者や組織メンバー、リクルーターに対し、最低6回から最大24回までのむち打ち刑を義務化することが盛り込まれた。
また、他人のSingpass情報、SIMカード、銀行口座を詐欺に提供した「マネーミュール(協力者)」にも、裁量で最大12回のむち打ち刑が科される可能性がある。これは裁判所の判断で適用が決まる。
内務省(MHA)は、「詐欺対策は国家的最優先課題であり、被害と件数の増加が深刻な懸念となっている」と強調。2019年以降の詐欺被害総額は34億Sドルを超え、2024年だけで過去最高の11億Sドル、2025年1〜8月の時点でもすでに6億Sドル超に上っている。
今回の法案では、詐欺関連だけでなく、性的犯罪、弱者への致死的虐待、公務員へのドクシング(個人情報晒し)、青少年犯罪者への刑罰強化など、多岐にわたる改正も盛り込まれている。
性的犯罪に関しては、成人同士の合意に基づく性的メッセージ交換を処罰対象から除外。一方で、18歳未満を描いたわいせつ物やAI生成ポルノに対する罰則を強化する。また、被害者の同意なく親密画像を作成・拡散する行為を明確に犯罪とし、大規模なオンライン流通を行った場合は最長4年の禁錮および罰金を科す。未成年者の画像を含む場合は最長7年に引き上げられる。
さらに、性的グルーミング犯罪の域外適用も導入され、シンガポール国外で行われた場合でも、加害者または被害者のいずれかが国内から出入国した場合は処罰対象となる。
その他の改正では、弱者への致死的虐待の最高刑を20年から終身刑または最長30年に引き上げ、公務員を対象としたドクシング行為については、実際の被害証明がなくても「嫌がらせ目的」であれば処罰可能とする。また、偽情報を伴うドクシングには最長3年の禁錮または1万Sドルの罰金が科される。
MHAは声明で、「犯罪者が逃げ場のない安全で公正な社会を維持するため、刑法を定期的に見直し、時代の変化に対応していく」と述べた。
詐欺師やリクルーターに最大24回のむち打ち刑、シンガポールが新法案提出
