職場の変化が加速する中、シンガポールでは学位保有者が非学位者に比べ、より高い技能職への就業機会と賃金上昇の恩恵を受けていることが明らかになった。スキルズフューチャー・シンガポール(SSG)とワークフォース・シンガポール(WSG)が10月10日に発表した「Jobs-Skills Insights Report」によると、2026年の労働市場では「スキル重視(skills-first)」の流れが一層強まる見通しである。
報告書によれば、労働者の56%が職業訓練や学習機会の増加を実感している一方で、恩恵を受けているのは主に大卒者層である。彼らは非大卒者に比べ、スキル活用度、給与、自律性のいずれにおいても明確な上昇が見られた。
特に、大卒者の高技能職就業率は過去10年で61%から74%に上昇し、技能の高い大卒者(78%)にほぼ並んだ。一方で、高スキルを持つ非大卒者の高技能職就業率は59%から39%へ低下。非大卒でも高い識字・数的能力を持つ人材が多いにもかかわらず、成長機会が限られている現状が浮き彫りとなった。
報告書は、職場変革を牽引する主要スキルとして、①読解・文章力、②影響力(交渉・説得)、③協働力、④ICT活用、⑤水平的コミュニケーション(研修・発表など)を挙げ、業種を問わず重要性が高まっていると指摘した。
デズモンド・リー教育相は「資格は依然として重要だが、それだけに依存していては経験や実務スキルを見逃す」と述べ、「採用・育成・昇進の全過程でスキルを重視する文化へ移行する必要がある」と強調した。
SSGは同日、新たに「職務要件(スキル)インデックス」と「職種別スキルプロファイル」の2つのダッシュボードを公開。849職種におけるスキル需要の変化や、941種の職種別主要スキルを可視化し、労働者や企業が将来のキャリア形成や研修設計に活用できるよう支援する。
大卒者の賃金・自律性が向上。スキル重視の時代に非大卒者との格差拡大
