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米国関税影響を受けた企業向け新助成金

 シンガポール企業庁(Enterprise Singapore)は10月6日、米国による追加関税の影響を受けた企業を支援する新制度「ビジネス・アダプテーション助成金(BizAdapt)」の申請受付を開始した。対象はシンガポールに拠点を持ち、事業の30%以上を国民または永住者が保有する企業で、海外市場での事業または輸出を行い、関税の影響を受けていることが条件である。
 
 本助成金では、中小企業(SME)が対象経費の最大50%、大企業が最大30%を補助でき、1社当たり上限は10万Sドルである。申請はビジネス助成金ポータルを通じて受け付け、2027年10月6日までの2年間実施される。
 
 本制度は、2025年初頭に設立された経済レジリエンス特別委員会(SERT)が策定した施策の一環である。トランプ米大統領による「相互関税」措置で90ヵ国以上が対象となり、地政学的緊張と技術分断による経済影響が拡大していることを受けて導入された。
 
 助成対象となる支出には、FTA・貿易コンプライアンス、法務・契約問題、サプライチェーン最適化や市場多角化のための専門アドバイザリー費用が含まれる。さらに、製造拠点の再構築が必要な企業は、物流費(輸送費、通関料など)や倉庫賃料、在庫管理システム導入費なども支援対象となる。
 
 シンガポール経済団体連合会(SBF)のマーク・リー副会長は「企業がリスク分散を進めるうえで貴重な支援となる。変動の激しい環境下で、1Sドルの価値は極めて大きい」と述べた。ガン・キムヨン副首相は「BizAdaptは関税の直接的影響を受ける企業だけでなく、米国向け製品供給に関わる企業の強靭化にも寄与する」と語った。