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2031年までに全学校が新スマート管理システム導入へ

 シンガポール教育省(MOE)は、2031年までに全国の全ての公立・特別支援学校の施設運営を中央管理型システムへ移行する方針を明らかにした。これにより、各校が個別に行っていた設備管理を教育省が新たに導入する「スマート・ファシリティ・マネジメント(Smart FM)」システムで一元的に監督する。
 
 Smart FMは、照明、空調、電力・水道使用量などの日常運用を自動または遠隔で制御できるもので、既存の消防設備や給水タンク、空調機器などと連携し、全校の運営状況をリアルタイムで監視できる統合プラットフォームとなる。システムは政府技術庁(GovTech)のクラウドサービスと接続され、データ分析や効率的な保守計画にも活用される。
 
 MOEは2024年3月、システム構築と保守業務をNCSシンガポール社に総額7,860万Sドルで委託した。導入は校舎設備の準備状況に応じて段階的に進められ、最終的に354校が中央ホスティング方式で運用される予定である。
 
 MOEによると、Smart FMの導入により、使用状況に応じた照明や空調の自動調整、設備故障の早期検知、エネルギーと水資源の使用削減が可能になるという。さらに、手作業に依存していた従来の管理方式を脱却し、生産性・効率性・環境持続性の向上を目指すとしている。
 
 南洋理工学院(ナンヤン・ポリテクニック)工学部のグラハム・ン教授は、「スマートビルは運用効率を高め、問題を即時に検知し、必要な時のみ設備を稼働させることができる」と説明し、長期的にはコスト削減と持続可能性の向上に寄与すると述べた。一方で、センサー故障やサイバー攻撃のリスクにも注意が必要だが、適切な保守とセキュリティ対策で十分に管理可能だという。
 
 また、Ng教授は「学校がエネルギーや水の使用状況をリアルタイムで把握できるようになれば、生徒や教職員の環境意識を高め、学習現場そのものが“持続可能性教育”の実践モデルとなる」と語った。