HSBCは10月1日より、シンガポールでの新規クレジットカード申請に必要な最低年収を従来の3万Sドルから6万5,000Sドルに引き上げた。同行はこの変更について、「富裕層顧客へのサービス強化を目的とした戦略的方針の一環」と説明している。
DBS、UOB、OCBCの地場3行や、シティバンク・シンガポール、スタンダードチャータード銀行などの外資系銀行は、現時点で最低年収条件を3万Sドルに据え置いている。
HSBCの新基準は、外国人を含む新規申請者に適用される。また、シンガポール居住者であっても同行に預金・投資・保険などの合計残高(トータル・リレーションシップ・バランス)が5万Sドル未満の場合、同様に年収6万5,000Sドル以上が必要となる。一方、残高5万Sドル以上の既存顧客は従来どおり年収3万Sドルで申請可能である。
今回の変更は、プレミア顧客向け「HSBCプレミア・マスターカード」を含むすべてのカードに適用される。モーニングスターのマイケル・マクダッド上級アナリストは、「HSBCは世界的にリテール事業をより選択的に展開しており、シンガポールでもその方針を反映している」と分析する。
一方、金融アドバイザリー会社シンキャピタルのアルフレッド・チャ最高経営責任者(CEO)は、「年収3万~6万5,000Sドルの中間所得層、特に若手社会人にとってはHSBCカード取得が難しくなる」と指摘し、他銀行のカードを選ぶ選択肢もあると述べた。
地場3行やシティ、スタンダードチャータードは依然として最低年収3万Sドルを維持しており、プレミアムカードやライフスタイルカードの上位ラインでは12万Sドル以上の所得が求められている。チャ氏はまた、「クレジットカードは収入の代替ではなく、特典だけを目的に取得すべきではない」とし、返済能力に応じた利用を呼びかけた。
HSBC、シンガポールでクレジットカード申請条件を引き上げ
