2025年9月17日
シンガポール政府、AI活用や新興市場開拓を柱に経済戦略を刷新
シンガポール政府は9月16日、経済戦略の刷新に関する各省庁の施策を公表し、人工知能(AI)の活用支援や新興市場への進出を通じて企業と労働者の競争力強化を図る方針を示した。人材省(MOM)、貿易産業省(MTI)、金融管理局(MAS)、首相府傘下の国家研究基金(NRF)が、大統領演説に対する施政方針演説補足の形で発表した。
MTIのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は、シンガポールを世界的企業の拠点かつ経済の要衝として位置付けると強調した。先端製造業の強化、AIやバイオ技術、ロボットの活用、グリーン・デジタル経済での成長機会を取り込むとした。また有望な地場企業の海外展開を支援し、生産性向上のためデジタル技術とAIの導入を加速する。自由貿易協定を拡充し、ラテンアメリカ、南アジア、中東、アフリカなど新興市場との連携も深化させる。
MOMのタン・シーレン人材相は、AIリテラシーの普及や労働者の再教育を推進し、企業と労働者が共に変革できる体制を整えると述べた。雇用法を改正し、多様な労働者層の保護と企業の柔軟性を両立させる方針である。またプラットフォーム労働者やフリーランスへの支援強化、職能の専門職化を進める。公正な雇用を保証する「職場公正法」や、致命的労働災害率を2028年までに10万人あたり1件未満とする目標も維持する。
MASは、経済情勢の変化に応じた金融政策運営とともに、金融システムの安全強化を進める。詐欺対策として「マネーロック」導入に続き、認証強化などの新措置を検討する。金融機関のAI活用や資産取引のトークン化も後押しし、効率化とコスト削減を図る。
NRFは研究・イノベーション基盤を拡充し、国際連携を深める。RIE2025に28億Sドルを投じた成果として研究の質が世界平均を大きく上回ったと報告し、次期RIE2030では国家戦略課題に直結する研究を推進する。


