2025年、シンガポールの海岸で絶滅危惧種タイマイの産卵巣が過去5年間で最多となった。国立公園局(NParks)によれば、5月から10月の産卵シーズンがまだ2カ月残る中、すでに18巣が確認されており、2021~2024年の年間平均11巣を大きく上回った。
タイマイは熱帯の海に広く生息し、スポンジを食べることでサンゴ礁の健康を保つ役割を果たす。しかし、産卵地の消失、埋め立てや海洋汚染、違法取引による甲羅需要など、人為的な脅威に直面している。シンガポールでは毎年、東海岸公園やチャンギなどで産卵が確認されており、2018年には小シスターズ島に孵化場が設けられ、巣の保護と孵化成功率向上が図られている。
孵化した子ガメが成体になる確率は推定で1,000分の1にすぎない。NParksのカレン・タン博士は「巣は孵化成功率や影響要因を追跡するために監視されており、各段階で介入を行うことで生存率向上を目指す」と述べた。
一方、もう一種のウミガメであるアオウミガメは国内での産卵が確認されておらず、隣国マレーシアでは一般的に見られるのと対照的である。2017年から始まったNParksの調査では、国内で観察された産卵個体はすべてタイマイであるという。
NParksは雌ガメに標識や衛星発信器を装着して行動追跡を行っており、これまでに少なくとも2個体がインドネシア・リアウ諸島から来ていることが判明している。しかし依然として不明点は多く、気候変動の影響も含め研究が進められている。
市民もNParksの「Biodiversity Beach Patrol」に参加することで調査を支援できる。産卵中のカメを見かけた場合は近づかず、光を当てたり大声を出したりしないこと、また足跡を保護することが呼びかけられている。発見時はNParksのホットライン(1800-471-7300)に連絡するよう求められている。
シンガポールでタイマイの産卵巣、5年ぶりの高水準に
