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シンガポール郵便、米国向け新サービス開始 関税変更に対応

 シンガポール郵便(SingPost)は9月15日から、米国向けの新たな小包サービス「Speedpost Direct International(Retail)」を開始した。8月29日に米国が郵便物に対する「デ・ミニミス」免税制度(800USドル以下の関税免除)を撤廃したことを受けた措置である。
 
 従来は800USドル未満の郵便物には関税や税金が課されなかったが、新制度下ではすべての商業貨物に課税と厳格な審査が行われる。SingPostは8月25日に米国向けの通常郵便サービスを停止していたが、新サービスにより出荷を再開する。
 
 新サービスでは、最大0.5kgまでを29Sドルで送れる緩衝材付き封筒、または2kgまでを69Sドルで送れる標準箱が用意される。配送日数は5〜8営業日を想定し、1件あたりの内容物価値は100USドル以下に制限される。料金には関税・税金は含まれず、郵便局で事前に算出・徴収される仕組みである。
 
 シンガポール郵便グループCOOのネオ・スー・イン氏は「必要な税金や関税を事前に支払うことで、受取人が予期せぬ追加費用に直面せずに済む透明性の高いサービスを提供できる」と述べた。
 
 小口発送が頻繁な事業者やEC販売者には法人アカウントの利用が推奨され、専任マネージャーが幅広い配送ニーズを支援する。2kgを超える荷物や100USドル以上の品は、プレミアムサービス「Speedpost Express(International)」を利用する必要があり、3〜6営業日で配送される。
 
 今回の制度変更は、フェンタニル密輸の容易化を理由にトランプ大統領が免税制度の2027年終了を前倒ししたことに起因する。シーインやテムなどの海外EC企業に有利との批判もあり、米小売業界の圧力も背景とされる。世界各国の郵便事業者は混乱し、30カ国以上が一時的に米国向け郵便を停止したが、今回のような「関税前払い型」サービスにより順次再開している。