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シンガポールの14歳少年にISA制限令 複数の過激思想に傾倒

 シンガポール内務保安局(ISD)は9月9日、14歳の少年に対し国内治安法(ISA)に基づく制限令を発出したと発表した。少年はわずか1年でイスラム国(ISIS)、極右・極左思想、共産主義、女性やユダヤ人への憎悪など矛盾した過激思想を取り込み、オサマ・ビンラディンやヒトラー、金正日を偶像視していた。ISDは「サラダバー的」混合思想による自己過激化の初事例と説明した。
 
 少年は2024年半ばに過激派のネット投稿に触れ、ニュージーランド・クライストチャーチ銃乱射犯タラントやノルウェー襲撃犯ブレイビクの声明に接し、ナチズムに共感を示す一方、イスラム教徒として反イスラム的言説は拒否した。また資本主義を「ユダヤの思想」と見なし、北朝鮮体制を称賛するなど矛盾した支持を示した。2024年11月にはISISの戦闘映像を視聴し、翌年4月には同組織への忠誠を誓った。
 
 少年はISIS関連資料をSNSで拡散し、国外の過激派とも接触。イラク拠点のISIS支持者から爆弾製造マニュアルを受け取るなど攻撃計画を持ちかけられたが、実行には至らなかった。学校襲撃やユダヤ人殺害も空想し、女性嫌悪的な「インセル」思想にも影響されていた。家族は活動に気付かず、少年は閲覧履歴を消去して隠していたという。ISDは宗教カウンセリングと心理・社会的リハビリを実施し、学校や家庭と連携して学業の継続を支援する。
 
 同時に、30歳の自営業男性もISAの制限令を受けた。彼はシリア紛争を契機に反アサド感情を募らせ、シリアでの戦闘参加やトルコ防衛のための武装を志向していたが、具体的な渡航準備には至らなかった。
 
 ISDは「若年層はデジタル環境で容易に過激思想に触れ、断片的に取り入れて矛盾した思想を抱える傾向があるが、暴力行為への動機となれば深刻な脅威である」と警告。市民に対し、過激化の兆候をSGSecureなどを通じて早期に報告するよう呼びかけた。