シンガポールの住宅開発庁(HDB)店舗において、民間所有の賃貸店舗の家賃が過去1年間で倍増し、過去最高水準に達した。一方、HDBが直接貸し出す店舗では家賃がほぼ横ばいで推移している。
都市再開発庁(URA)のデータによれば、民間保有のHDB店舗の中央値賃料は2024年第2四半期の1平方フィート当たり3.51Sドルから、2025年第2四半期には7.34Sドルへと急騰した。特にトアパヨでは、2024年第4四半期から2025年第2四半期にかけて58.6%の上昇が確認された。
HDBは、全体で約8,500の民間保有店舗と7,000の直営店舗を有する。民間保有店舗は1998年以降新規販売が停止され、政府直営が基本となっている。HDB直営店舗では9割が過去5年間ほぼ据え置きであり、安定した賃料が事業継続の支えとなっている。
一方、民間所有の店舗では急激な家賃高騰に直面し、多くの事業者が分割貸しや縮小、移転を余儀なくされている。あるベーカリーは家賃1万2,000Sドルに対処するため、店舗の一部を美容室に転貸している。携帯電話小売店では、家賃2万8,000Sドルの上昇を避けるため規模を縮小した事例もある。
不動産業者は、景気不透明感や経営コスト上昇により、2025年は家賃上昇が鈍化し、交渉余地が広がる「借り手優位」の傾向が強まっていると指摘する。HDB店舗の供給が限定される中、今後は政府が賃料水準を左右する主要な貸主になると見られる。
民間保有のHDB店舗家賃が倍増、政府直営店舗は安定推移
