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社会

2025年8月29日

シンガポールの退職観に変化 不動産より現金重視へ

 シンガポールにおける退職後の資産形成に関する意識が大きく変化している。マニュライフが実施した「アジア・ケア調査2025」によれば、退職資産として不動産を重要視すると答えた割合は35%にとどまり、過去にそう考えていた65%から大きく低下した。特に25~34歳の若年層でその傾向が顕著である。
 
 調査は2025年1~2月にオンラインで行われ、アジア9市場で9,000人超が回答し、そのうち1,021人がシンガポールからであった。マニュライフ・インベストメンツ・シンガポールのコーCEOは、将来の生活資金を不動産よりも収益性と柔軟性を備えた金融資産で準備する動きが広がっていると指摘する。
 
 背景には長寿化と医療費増大がある。調査によると、平均66.5歳でがんや脳卒中などの重大疾病に直面すると予測され、平均寿命83.5歳との差から少なくとも17年間は治療や介護に向き合う可能性がある。7割の回答者は保険が安心感につながると答えており、老後の経済的自立には医療費への備えが不可欠である。
 
 一方で、退職資金が十分と考える人は4割に満たず、多くが現金を過度に保有している。資産構成では現金・預金・定期が47.3%を占め、長期的な資産成長を阻害しているとの指摘もある。コー氏は「現金偏重は購買力を損ない、資産成長を制限する」と警鐘を鳴らす。
 
 年齢層によって優先事項は異なる。55歳以上は安定収入を重視する一方、25~34歳はリスクを取りつつ長期的な資産拡大を志向する。金融リテラシーの高まりも若年層の特徴である。さらに、専門家の助言を得ている人の71%が退職準備に自信を持つのに対し、独自に進める人では41%にとどまった。
 
 マニュライフ・シンガポールのメスレCEOは「人々は健康と資産の両立を求め、より良い老後の実現に向けて行動している」と述べ、明確な戦略と専門的な助言の重要性を強調している。

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