2025年8月27日
企業買収時、従業員は雇用を心配すべきか
企業が買収されると、自身の雇用が脅かされるのではないかと不安を抱く従業員は多い。しかし人材紹介会社ManpowerGroupシンガポールのリンダ・テオ氏によれば、買収が必ずしもリストラにつながるわけではなく、むしろ事業拡大や新規ポジションの創出につながる場合もあるという。結果は買収の戦略的目的や統合の進め方に左右される。
一方で、Adeccoシンガポールのシンディ・リー氏は、買収後には事業戦略の見直しにより部門縮小や市場撤退が起こり得ると指摘する。役割の重複や部門再編が告知される場合は、冗長化リスクの兆候と見なすべきである。また、意思決定への関与が減少したり、組織の方向性が不透明になったりすることも注意信号とされる。
加えて、雇用期間や報酬水準も影響要因となる。コストの高い役職は統合過程でリスクが高い場合があるという。採用凍結や新リーダーによる組織再編も危険サインの一つである。
従業員にとって重要なのは、公式な社内通達やブリーフィングに敏感であり続けることだ。直属上司や人事、他部門の同僚に情報を求め、全体像を把握する努力も有効である。さらに、人脈を広げ、将来的な役割変更や再配置の可能性に備える姿勢が求められる。自らの権利や退職金制度について理解を深めておくことも不可欠である。
買収は必ずしも人員削減を意味しないが、報告ライン、チーム再編、システム変更、福利厚生の見直しなど日常業務に大きな影響を及ぼすことが多い。従業員は、役割変更やスキル再教育の機会、内部異動の可能性について積極的に上層部へ確認することが推奨される。
両氏は「明確に役割が消失すると判断できる場合や、他部門への転換が不可能な場合を除き、軽々に退職を選択すべきではない」と強調する。買収は不安を伴うが、同時にキャリアの新たな機会をもたらす可能性もある。


