シンガポール経済は米国による高関税政策の影響が続く中でも、雇用創出、住宅供給、インフラ整備といった基盤により強靭性を維持していると経済専門家らが指摘した。8月17日のナショナル・デー・ラリーで、ウォン・ローレンス首相は短期的な景気刺激策や現金給付ではなく、労働者の技能向上、企業の技術導入、住環境の更新、将来世代に向けた住宅の確保に重点を置く戦略を示した。
UOBのリサーチ責任者スアン・テック・キン氏は、AIが経済に大きな変化をもたらす中で、生涯学習や再技能化の重要性を改めて強調。シンガポールが「未知の世界で生き残るだけでなく繁栄する方法」を提示したと評価した。
メイバンクのチュア・ハク・ビン氏は、米中対立の激化が懸念されるものの、政府の雇用支援策や北部開発計画が経済を下支えすると分析。ジョホールバルとシンガポールを結ぶ高速輸送システム(RTS)や特別経済区(JSSEZ)の整備により、ウッドランズやクランジ、センバワンでの産業拠点と住宅開発が進み、景気減速時にも建設需要が持続すると述べた。同氏は2025年の成長率を3.2%と予測し、貿易産業省の1.5〜2.5%を上回る見通しを示した。
DBSのチュア・ハン・テン氏は、米関税の直接的影響は限定的だが、間接的には輸出や企業投資に慎重姿勢をもたらすと分析した。関税は依然として10〜30%、中国向けは50%超と歴史的高水準であり、製造業や物流分野が影響を受ける可能性があると警告した。一方で、AI導入は生産性を大幅に押し上げ、特に中小企業の活用余地は大きいと強調した。
また、政府が打ち出した新卒者向けトレーニーシップや中堅層向けスキルズフューチャー制度強化は、雇用安定に寄与すると評価されている。首相は景気悪化時には支援規模を拡大すると明言しており、専門家はこれらの施策が労働市場の下支えと人材育成の両立に資するとの見方を示した。
シンガポール経済、雇用・住宅・インフラで強靭性維持
