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ローレンス・ウォン首相、変わる世界でも“団結と革新”で明日を切り開く

 2025年8月8日、ナショナル・デーの前夜にローレンス・ウォン首相は、パダンで撮影された全国向けメッセージを通じて、建国60周年を祝うとともに、国家としての結束と未来への挑戦への覚悟を訴えた。戦後に生まれ、独立を余儀なくされた小さな都市国家としての厳しい出発点から、数々の試練を乗り越えてきた歴史を訪れ、「困難な時代にも私たちは屈せず、繁栄を勝ち取ってきた」と述べた。これこそSG60の意義であり、国家として成長を遂げた証であると強調した。
 
 続いて、世界情勢の先行き不透明さに言及し、国家繁栄の基盤であった国際秩序の崩れを懸念した。貿易障壁の強化、地政学的対立、保護主義の台頭などが目立ち、これまでの国際環境がもはや当たり前ではなくなっている現実を指摘した。そうした危機的な状況に直面しているからこそ、シンガポールは「黙して待つのではなく、自ら未来を切り開く姿勢」が必要であると訴えた。
 
 経済展望に対しても直視しつつ、シンガポール経済はこれまで堅実に強靱性を保っていると評価した上で、依然として先行きには多くの不確実性が残るとし、即効的な支援策だけでなく、中長期の戦略的視点での準備が不可欠であると語った。政府が進める「Forward Singapore」構想やSkillsFutureジョブシーカー支援制度などを挙げ、国民が変化に対応できるよう、教育・スキル・安全網の強化を前提に支援を続ける姿勢を明示した。
 
 さらに、シンガポールの強さは「シンガポール・スピリット」、すなわち多様性を超えた団結と相互信頼に基づく共通の信念にあると言及した。言語や宗教や文化の異なる人々が一つの国として共に歩んできた歴史に言及し、そうした国民の絆こそが、不確実な未来にも立ち向かう力の源であると説いた。パダンの歴史的背景に触れ、先人たちが立ち上げた国家を受け継ぎ、新たな85年、100年に向けて前に進む決意を改めて表明した。