2025年7月31日、シンガポール拠点の格安航空会社ジェットスター・アジアが20年超の歴史に幕を下ろした。同社は6月、コスト上昇と競争激化を理由に事業終了を発表し、約550人のシンガポール人スタッフを含む従業員の解雇を決定した。
CEOのジョン・シモーネ氏は最終運航日に取材に応じ、500人超の退職者による約900件の再就職活動のうち、54%が内定や面接に進んでいると明かした。残りの職員は転職準備中、休息中、あるいは結果待ちの状況にあるという。
従業員のプロ意識も光った。発表当日の6月11日朝に解雇通告を受けながらも、その日午後には約40便が平常通り運航された。シモーネ氏は「最も辛い1日だったが、皆が互いを支え合い、最後まで責任を果たした」と語った。
最終運航日には多くの感動的な別れもあった。53歳の客室乗務員アン・アンさんは、がん治療からの復職後に採用されたことに感謝を述べ、「ここで過ごした6年間は人生で最も充実した日々だった」と涙ながらに話した。彼女は現在も別の航空会社への転職を目指して活動中である。
一方、61歳のカスタマーサービスマネージャー、ジョスリン・チョウさんは、13年間務めたジェットスター・アジアでの最後の便に誇りを持って臨んだ。今後はチャンギ空港のラウンジを運営するホスピタリティ企業アコーで勤務する予定である。
パイロットのニコ・ヴァン・デル・スカイフ氏(56)は「時代の終わり」と語り、過去15年間での仲間や乗客との絆に感謝を示した。彼は今後、機材をオーストラリアへ回送後、南アフリカに戻り、甥と共にイタリア料理店を開業する計画である。
この日、到着ロビーには約200人の仲間や家族が集まり、花束やメッセージ入りバナーで乗務員を温かく出迎えた。拍手と涙に包まれた別れの場面は、多くの人の心に残るものとなった。
シモーネ氏は、ジェットスター・アジアが低価格で東南アジア旅行を身近なものにし、多くの人に新たな目的地への扉を開いたと振り返り、その功績を「安全と顧客重視の企業としての誇るべきレガシー」と位置づけた。
今後、約70名のスタッフが10月末まで規制対応を担当し、さらに30名が12月末まで事務処理にあたる予定である。
ジェットスター・アジア最終運航 従業員の半数超が再就職へ一歩
