2025年7月31日
シンガポール、第2四半期の雇用増も情報通信・専門職での雇用縮小が懸念
シンガポール労働市場は2025年第2四半期に明るさを見せたが、情報通信や専門サービス分野での雇用縮小が懸念材料として浮上している。シンガポール人材省(MOM)が7月30日に発表した速報値によると、同期間の総雇用者数は前期比8,400人増となり、第1四半期の2,300人増や2024年第4四半期の7,700人増を上回った。
雇用増は、シンガポール人および永住者(レジデント)と非居住者の双方に及んでいる。ただし、前年同時期の1万1,300人増と比べると伸び幅はやや縮小している。
分野別では、建設業や行政支援、医療・福祉サービス業などで非居住者の雇用が拡大。特に建設業ではワークパーミット保有者の増加が全体を押し上げた。一方、情報通信、専門サービス、小売業などの対外依存型セクターではレジデント雇用が軟調で、全国労働組合会議(NTUC)の葉婉玲事務次長も警戒感を示している。
失業率は6月時点でレジデントが2.9%、市民が3.0%と、4〜5月の微減からわずかに上昇し3月の水準に戻った。いずれも景気後退ラインは下回っている。
同期間の解雇者数は3,500人で、前期比でほぼ横ばいまたは減少傾向にある。解雇の主因は事業再編・組織再構築であり、1,000人あたりの解雇者数は1.4人と、前期の1.5人から微減した。
企業の採用・賃上げ意欲もやや鈍化している。MOMの調査では、2025年第3四半期に採用を予定する企業の割合は前期の44%から43.7%に減少。賃上げを見込む企業の割合も24.4%から22.4%に低下した。
特に金融、専門職、運輸・物流といった外需型産業で、賃上げ期待が後退している。MOMは今後も世界経済の不透明感が継続し、雇用や賃金の伸びに影響を与える可能性があると見ており、労働市場の先行きには慎重な姿勢が求められている。


