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経済

2025年7月31日

シンガポール経済、2025年後半は関税と貿易摩擦で減速の懸念―MASが警鐘

 シンガポール金融管理庁(MAS)は7月30日発表の四半期マクロ経済レビューにおいて、2025年後半のシンガポール経済が高関税や貿易摩擦の再燃により減速する可能性があると警告した。これまで予想を上回る成長を見せてきた経済は、今後試練を迎えるとみられる。
 
 第2四半期の実質GDPは前期比1.4%増、前年同期比では4.3%増と好調だったが、これは主に米国による関税引き上げ前の輸出前倒しによる一時的な追い風に支えられたものだった。特に電子機器や医薬品は関税の対象外となったことで、再輸出が前年比31%急増した。
 
 しかし、8月以降はトランプ大統領による関税猶予の終了と中国との貿易休戦の終了が控えており、貿易関連部門には反動減が見込まれる。MASは、「前倒し需要の効果が薄れる中、不透明感が基調的な需要を抑制する可能性がある」としている。
 
 実際、シンガポールの米国向け輸出にかかる実効関税率は6.8%から7.8%に上昇。米国が6月に鉄鋼とアルミニウムの関税を50%に倍増させた影響が表れている。また、周辺国との相互関税の上昇も、間接的にシンガポール経済へ打撃を与えると見られる。
 
 国内経済への波及も懸念されており、小売業や飲食業など消費関連部門の鈍化、企業の投資判断の先送りにより設備投資の伸びが鈍る可能性がある。これにより、GDPの成長率は中期的に抑制されるリスクがある。
 
 一方で、建設業や金融業の一部では引き続き成長の支えが期待され、個人投資家や機関投資家によるリスク資産への回帰が市場の取引活性化につながる可能性もある。MASは「市場の回復により金融セクターの手数料収入などを通じて成長を下支えする」と述べた。
 
 ただし、企業の雇用や投資に対する慎重姿勢が強まれば、労働市場の需給も緩和し、雇用の伸びが鈍化する可能性がある。MASは引き続き経済状況を注視しながら、成長と安定の両立に向けた対応を取る構えである。

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