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シンガポールの学校で深刻化する未成年の電子タバコ問題

 シンガポールの小中学校で、電子タバコ(VAPE)の使用が広がりを見せており、教師や保護者がその対策に頭を悩ませている。特に小学校高学年や中学生の間での使用が目立ち、2024年には学生による電子タバコの所持・使用が2,000件報告され、2022年の800件、2023年の900件から大幅に増加した。
 
 ある小学校教員は、2025年に入り5人の生徒が電子タバコを所持していたと語る。入手経路はTelegramなどのSNSや、上級生の兄姉からであることも多いという。電子タバコは分解でき、形もUSBやペンのように見えるため発見が困難で、トイレットペーパーのホルダーや下着に隠す例もある。
 
 シンガポール教育省(MOE)と保健科学庁(HSA)は取り締まりと啓発を強化しており、2024年3月以降は校内での所持・使用が発覚した学生に最大2,000Sドルの罰金が科される。これにより保護者の反発も減り、再犯防止につながっているが、それでも隠れて使用する生徒は後を絶たない。
 
 保健省は禁煙支援として電話相談「QuitLine」や校内カウンセリングを提供しており、毎学期ごとに保護者向けの啓発資料も配布されている。しかし、一部の保護者からは「子どもはただ好奇心で試しているだけ」「喫煙よりまし」といった反応もあり、価値観の違いが対応の妨げになることもある。
 
 また、2025年には麻酔薬「エトミデート」が混入された電子タバコ「Kpods」の使用が確認され、政府は同成分を薬物乱用法の規制対象に加える方針を発表。2024年1月から2025年3月の間に押収された関連製品の総額は4,100万Sドルに達した。
 
 中には、娘の電子タバコ使用を止められず、2025年に女子更生施設に預けたという母親もいた。「もっと早く学校が異変に気づいてくれれば」と語り、学校と家庭、そして政府の連携強化を求めている。
 
 電子タバコの影響は学業や健康だけでなく、生徒・家庭・学校全体に波及しており、シンガポール社会全体としての対応が急務である。