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Sumo Salad経営者が告発した労災詐欺疑惑、MOMが調査開始

 シンガポール労働省(MOM)は、カフェチェーン「Sumo Salad」の故ジェーン・リー氏が告発した疑わしい労災請求について、現在調査を進めていると発表した。7月24日のメディア対応で、労働担当国務大臣ディネシュ・ヴァス・ダシュ氏が明らかにし、リー氏の家族へ哀悼の意を表した。
 
 MOMによれば、リー氏とは彼女の死去前から連絡を取り合っており、保険会社と連携して必要な対応を取るとしている。また、同件に関して警察による捜査も進行中であり、詳細は後日明らかにされる予定だ。
 
 ジェーン・リー氏は7月18日、Facebookに2本の投稿を行い、元従業員が契約終了の2日前に転倒を装い、虚偽の労災請求をしたと訴えた。さらに、その行為は従業員の夫および法的代理人を巻き込んだ計画的なものだった可能性があると主張し、MOMと警察に徹底的な調査を求めていた。彼女は投稿の翌日に死去している。
 
 この出来事は、広く国民の同情を集めると同時に、中小企業(SME)経営者からも労災対応の難しさに関する声が上がっている。
 
 ハラル食品メーカー「Pondok Abang」のハサン・アブドゥル・ラーマン氏は、「労災の多くは作業手順を守っていれば防げるもの」と述べた。明確な詐欺には遭遇していないが、契約終了間近に起きる事故には疑念を抱くこともあるという。
 
 ただし、多くの経営者は訴訟リスクや当局からの監視を避けるため、詳細追及をせずに医療費や補償を迅速に処理するのが実情だと話す。外国人労働者の医療費は補助が効かず高額になることが多く、給与、住居、食事の費用も企業側が負担する必要があるため、経済的・感情的負担は大きいと述べた。
 
 一方で、虚偽請求は稀であるという意見もある。「On Cheong Jewellery」経営者のチャールズ・ホー氏は、長年働いてきた社員の誠実さを信じ、入院休暇を超えても給与支給を続けた経験があると述べた。
 
 MOMは7月21日付で発表した声明の中で、従業員の虚偽請求に懸念がある場合は相談するよう企業側に呼びかけている。なお、問題となっている労働者は、労災補償法(WICA)に基づき補償請求の対象になっている。
 
 WICAは、業務中または業務が原因で発生した傷病に対して補償を受けられる制度であるが、過去にはこの制度を悪用した事例も存在。2021年には、虚偽の労災請求および偽証を行った2名の外国人労働者が実刑判決を受けている。
 
 今回の事案をきっかけに、制度の公正性と中小企業経営者の立場をどう守るかが、社会的な議論となりつつある。

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