シンガポールの老舗ヘッジファンド「New Silk Road Investment」が16年の運用に幕を下ろす。近年の低調な運用実績と、米国投資家によるアジア市場からの資金引き上げが要因である。
同ファンドは2009年に、ドイツ銀行香港・中国株部門の元責任者フーン・イック・ルエン氏と、シンガポール政府投資公社(GIC)でアジア株を統括していたゴー・レイモンド氏によって設立。設立当初は中国本土にも投資チームを置き、人民元建ての証券投資が可能な外国機関投資家制度(QFII)にも2012年に認可された数少ない海外ファンドのひとつだった。
しかし、近年は厳しい市場環境に直面。運用資産は2021年の約20億USドルから、2024年末には約6億1,500万USドルまで激減した。主力ファンドであるアジア・ランドマーク・ファンドとチャイナ・ファンドは、過去5年のうち3年でマイナス成績を記録し、2022年にはそれぞれ28%、19%の下落に見舞われた。
共同創業者のフーン氏は、「米国機関投資家の多くが、地政学的リスクなどを背景にアジアの流動性株式投資に消極的になった」と語る。また、「今の市場は、価値志向の長期投資戦略にとって逆風であり、私たちのようなアクティブ型ファンドに不利な状況だ」とも述べた。
2025年には東南アジア向けファンドを閉鎖し、上海オフィスの人員も削減していたが、最終的には資金を全て投資家に返還し、全運用車両を閉鎖する決定に至った。
なお、閉鎖の理由は経営破綻ではなく、両創業者が60歳を迎えたことによる引退判断とされ、後継者も現時点では準備が整っていないという。
「これは、ベテラン2人が人生の新たな道を選んだというだけの話です」とフーン氏は語っている。
シンガポールの老舗ヘッジファンド「New Silk Road」、米国投資家の撤退で閉鎖
