人工知能(AI)を活用した新たな認知機能スクリーニングアプリ「Pensieve-AI」が、初期の記憶障害や認知症予備軍を高精度で判定できるツールとして注目を集めている。このアプリは、シンガポール総合病院(SGH)と政府技術庁(GovTech)によって共同開発され、2026年に全国で導入される予定である。
Pensieve-AIは、タブレットとスタイラスを使って高齢者が絵を描くというわずか3分半の検査を通じ、記憶や思考能力の異常をAIが解析する。従来の紙とペンを使った30分以上かかる検査に比べ、時間も人手も大幅に削減できる点が特長だ。
2024年9月に完了した全国規模の研究では、約1,800人の65歳以上の高齢者を対象にテストが実施され、初期認知症の検出精度は93%を記録。これは現在のゴールドスタンダードとされる詳細な認知検査と同等の精度であり、研究成果は2025年3月に科学誌『Nature Communications』に掲載された。
SGH精神科の上級コンサルタント、リュウ・タウ・ミン医師によれば、「軽度認知障害(MCI)は加齢と混同されやすく、見逃されがちであるが、早期の発見によって対応が可能になる」と述べている。兆候としては、頻繁な物忘れ、言葉に詰まる、日常生活の管理が難しくなるなどがある。
Pensieve-AIはスマートフォンへのダウンロードはできず、地域の高齢者センターなどに設置されたタブレットで使用される見通しだ。模倣による誤判定を防ぐための措置である。
実際の導入事例として、84歳のマダム・タン・ユーティーさんがアプリで初期認知症と診断されたケースがある。娘のフーンさんは「母の物忘れを年齢のせいとしか思っていなかったが、診断を受けたことで理解が深まり、支援の姿勢も変わった」と語っている。
現在、タンさんはアクティブ・エイジングセンターに通い、工作や仲間との交流を通じて日々を活発に過ごしている。娘は「社会との関わりが、症状の進行を防いでいるように思える。以前のようにテレビの前でぼんやりすることもなくなった」と話している。
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