2025年7月8日
学業と家計支援を両立するシンガポールの学生が増加中
シンガポールでは、学業と並行して働き、家計を支える学生が増えている。ポリテクニック在学中に毎日アルバイトをしていたアミリー・チャンさん(21)は、その代表例である。彼女は平日は最大5時間、週末は12時間も働きながら、食品ビジネスのディプロマを取得した。
社会福祉団体Allkin Singaporeによれば、学業と仕事を両立する17歳以上の学生の数は、2024年の5人から2025年には17人に急増。これは、家庭の経済的責任を学生が担う傾向が強まっていることを示している。
教育省によると、2023年度には、シンガポール人のITE学生の70%以上、ポリテク学生の約半数が政府の教育助成金を受けていた。対象は月収4,400Sドル以下または10,000Sドル以下の家庭であるが、生活費や学用品などをまかなうには不十分な場合も多い。
実際、学生たちは様々な事情で働いている。テマセクポリテクのルーカス・リムさん(18)は、定年を控えた父親を助けるためにスーパーで働く。シンガポールポリテクのヤップ・ジエ・アーさん(20)は父親の死後、母親と弟妹を支えるために自立を決意した。
多くの学生が週末に長時間働くため、学業への影響もある。ヤップさんは「勉強の時間が足りず、成績も下がった」と話す。最終学年を迎えた2024年7月にアルバイトを辞め、奨学金で学業に集中できるようになったという。
一方で、働くことで自信や実社会で必要なスキルを得たと語る学生も多い。リムさんは「時間管理や責任感が養われた。将来、家族のために役立てたい」と話す。
しかし、学業と仕事の両立は心理的な負担にもつながる。Allkinの心理士タン・イン・イン氏は、「友人との交流時間の減少やストレス、不安の増加が見られる」と指摘する。
政府や各種団体は、多様な経済支援制度を提供しているが、医療事情や文化的価値観、生活費の高騰などにより、学生が働かざるを得ない状況は続いている。支援のさらなる柔軟化と包括的な対応が求められている。


