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政治

2025年7月4日

チャンギ沖埋立てへ、海草保護で計画縮小

 シンガポール政府は、将来の航空貨物拠点拡張の一環として、チャンギ沖で約193ヘクタールの土地を埋め立て、航空パークを開発する計画を明らかにした。ただし、この地域に広がる国内最大級の海草群落を保護するため、当初の計画より約45ヘクタール削減されたことが分かった。
 
 埋立地はチャンギビーチパークとチャンギ湾近くの航空パークステージンググラウンドの間に位置し、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの約2倍の広さとなる。国土開発省の指導のもと、住宅開発庁(HDB)が埋立作業を担うが、具体的な着工時期は未定である。
 
 HDBは事前に環境影響評価を実施し、プロジェクト区域内に海草やサンゴが広く分布していることを確認。調査の結果、主にスプーンシーグラスと絶滅危惧のニードルシーグラスが生育する約34ヘクタールの海草地帯を保護するため、埋立範囲の縮小が決定された。
 
 環境への配慮として、埋立地の北端に入り江を設け、波の影響を和らげることで海草の自然繁殖を促進する計画も進められている。ただし、チャンギビーチパーク北側やチェクジャワ湿地など一部地域では、海中の浮遊堆積物による「軽度の悪影響」が避けられないとされている。
 
 サンゴについては、工事開始前に生息地外への移植を実施予定。加えて、傾斜を緩やかにした護岸やブロック構造を導入し、多様な海洋生物の生息を促進する設計が採用される。非常時対応計画も策定され、埋立作業中の海洋汚染や事故に備える。
 
 一方、研究者らは政府の対応を評価しつつも、影響を最小限に抑えるための慎重な実施と長期的なモニタリングの必要性を強調。NUSの研究者デビー・ン氏は、夕暮れ時に輝くハロフィラ・スピヌロサの群生地を「最も美しい自然の光景」と称し、未来世代への継承の重要性を訴えた。
 
 今後、政府は市民の意見も踏まえて最終承認を行う予定であり、工事期間中はチャンギビーチパーク周辺の来訪者が粉塵や騒音の影響を受ける可能性があるという。建設後の回遊型自然ルート「ラウンドアイランドルート」の整備計画についても、今後詳細が発表される見通しである。

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