2025年6月3日
Grab、自動車保険市場に参入へ 独自データ活用で競争に挑む
配車サービス大手のGrabは、保険部門であるGrabInsureを通じて、シンガポールの自動車保険市場への参入を本格化させている。2024年12月にはシンガポール金融管理局(MAS)から一般保険ライセンスを取得し、2025年5月には一般保険協会(GIA)にも加盟。これは自社の自動車保険商品投入に向けた動きである。
GrabInsureは現在、モータークレーム責任者をはじめとする保険部門の人材採用を進めており、業界関係者によればアクチュアリーやアンダーライターの採用も進行中である。採用された人材は、Grabのone-northキャンパスを拠点に、保険商品の収益性、クレーム処理体制、システム開発に関与する見通しである。
Grabの広報担当者は、「自動車保険を含めた新たな商品群の検討を初期段階で進めている」とコメント。これらの保険商品は、主にGrabのドライバーパートナー向けに設計されており、今後の詳細は追って公表される予定である。
シンガポールでは、2024年末時点で民間配車車両が9万台を超えており、Grabはこうした膨大な利用データとユーザー基盤を保有している。業界関係者は、同社がこの強みを生かして、既存大手を価格や商品内容で上回る可能性があると指摘している。
現在、自動車保険市場では、Income Insuranceが2025年第1四半期に約9,230万Sドルの保険料収入で25%のシェアを誇り、MSファーストキャピタル(10%)、AIG(9.3%)がこれに続く。しかしGrabは、自社アプリを通じたダイレクト販売と詳細な走行・事故データにより、低コストかつ柔軟な商品展開が可能である。
保険業界の専門家であるアラップ・メーラ氏は、「Grabは利用実績に基づく保険(Usage-Based Insurance)など、従来にない革新的な商品を投入する準備が整っている」と述べた。EV(電気自動車)の増加や物価上昇によって保険料が高騰する中、Grabの新たな参入は市場に新風をもたらす可能性がある。