2025年4月29日
米中貿易戦争、シンガポール経済と雇用にリスク
シンガポール金融管理局(MAS)は4月28日に発表した四半期マクロ経済レビューで、米国による一連の関税措置が世界経済に与える影響により、貿易依存型のシンガポール経済の成長、雇用、賃金にリスクが生じていると警告した。
2025年の経済成長率予測は0〜2%に据え置かれたが、貿易摩擦の長期化がさらなる下振れ要因となる可能性があると指摘した。インフレ率は、既に4年ぶりの低水準にあり、2025年は0.5〜1.5%の範囲で推移すると見込まれている。
米中貿易摩擦の影響で、製造業や卸売業を中心に雇用環境が悪化しており、企業は採用や拡張計画を控える傾向にある。第1四半期の失業率はわずかに上昇し、雇用増加ペースも鈍化した。
シンガポールのGDPは2025年1〜3月期に前期比0.8%縮小し、2024年第4四半期の0.5%成長から反転した。特に電子機器関連の生産鈍化が影響している。
米国はシンガポールにとって第2の輸出先であり、2024年の対米輸出の約11%を占めた。半導体や医薬品など主力品目は現在関税対象外だが、米国が安全保障上の懸念から調査を進めており、今後追加制裁の可能性もある。
世界成長率は2025年に2〜2.5%へ減速すると見られており、さらなる関税拡大や報復措置が取られれば、景気後退リスクが一段と高まるとMASは警告した。