2025年1月8日
シンガポール、詐欺被害者の口座を制御する法案可決 被害拡大防止へ新たな措置
シンガポール議会は1月、新たな詐欺防止法案を可決した。この法律により、警察は詐欺被害者の銀行口座を制御し、詐欺師へのさらなる送金を防ぐ権限を得た。この法案は、特に被害者が家族や警察の警告を無視して多額の送金を続けるケースに対応するために制定されたものである。
新たな法律の下、警察は制限命令(RO)を発行し、主要銀行に口座取引を制限させることができる。制限対象には、送金、ATM利用、クレジットカード使用が含まれ、PayNowや窓口での取引にも適用される。
当初、この法律は海外からの詐欺組織による遠隔詐欺に対処する目的で提案されたが、警察は対面で行われる詐欺ケースの増加を理由に、伝統的な詐欺にも適用範囲を拡大した。ROの適用期間は30日間で、最大6カ月間延長可能であるが、被害者が自ら送金を望む場合、それ以上の延長は行われない。
警察はROの発行に慎重を期し、被害者やその家族と協議した上で決定する。また、制限下でも日常生活に必要な資金の利用は許可され、家賃や生活費の支払いは適切な証拠を示すことで認められる。
シンガポールでは2024年上半期に詐欺による被害額が約3億8,560万Sドルに達し、被害件数は26,587件を記録。これらの詐欺の多くは社会工学的手法を利用し、権威への信頼や人間関係の欲求を悪用するものである。
法案に対する世論調査では、90%以上が支持を表明。一部で個人のプライバシー侵害への懸念があったものの、議員たちは詐欺の深刻さを強調し、法案の必要性を訴えた。
法案の提案者である孫雪玲内務担当国務大臣は、「詐欺対策は社会全体の責任であり、すべての人が協力して自身と家族を守る努力を続ける必要がある」と述べ、社会全体での取り組みを呼びかけた。