2021年8月20日
COVIDレジリエンスへの移行における新ステップまとめ
8月19日、シンガポール保健省(MOH)は、COVIDレジリエンスへの移行における次のステップについて以下のとおり公表した。
目次
国内の感染状況の更新
ワクチン接種は、コミュニティの感染状況を管理するための取り組みの重要なパーツであり続けている。 8月17日時点で、シンガポール人口の77%が国のワクチン接種プログラムに基づくワクチンの2回接種を終え、82%が少なくとも1回の接種を受けている。ワクチン接種に関しては、重症化や死亡者を大幅に減らすことができるという明確な証拠が揃っている。感染者のうち、ワクチン未接種者のほぼ9%がICUケアまたは酸素吸入を必要とし、約1%が死亡。一方、ワクチン接種を終えた者は、それぞれ1.3%と0.1%であることから、大きな効果をもたらしている事がうかがえる。
シンガポールでは7月22日にフェーズ2(Heightened Alert)が再導入されて以来、新規感染者数は着実に減少している。8月17日時点で、国内新規感染者数は、約2週間前は1日平均で123人であったが、先週の1日平均は63人と半減した。過去2週間、感染が確認される前に隔離された人の数は、全体の約半数に維持され、感染経路不明な感染者数も同様に、全体の約4分の1に抑えられている。
感染状況が安定している状況を踏まえ、シンガポール政府は8月19日からの国内対策の第2段階の緩和を計画どおり継続する。今回の緩和は主にマスク着用イベントや礼拝の規模を拡大することであり、感染リスクの観点で大きな影響はない。詳細はAnnex Aを参照のこと。
ワクチン接種済み、かつ重症でないCOVID-19感染者に対する自宅隔離モデルの試験的導入
シンガポールではワクチン接種率が高いことから、COVID-19感染者に対する治療方針を見直すことが可能となっている。国内外のデータによれば,ワクチン接種を完了した感染者は重症化するリスクがはるかに低いことが示されているため、軽症または無症状の感染者については最小限の支援を行う自宅隔離モデルを試験的に導入する。ただし、自宅隔離モデルの対象となる感染者は、家族から隔離されることができる適切な間取りの家を所有している必要がある。
シンガポール保健省(MOH)は、その自宅隔離モデルを8月30日から試験導入する。この取組は、リスクを調整した段階的な方法で開始される予定。感染者とその家族は両方ともワクチン接種を完了している必要があり、高齢者や免疫不全者などの脆弱なグループには適用されない。これは、世界保健機関(WHO)が推奨し、他の先進国のベストプラクティスに沿った扱いである。対象となる感染者は、自宅隔離になる前最初の数日間は医療施設で過ごす。自宅隔離になるまでに、ワクチン接種を受けた感染者のウイルス量は減少する見込み。
自宅隔離期間中、感染者とその家族は自宅に留まる必要がある。そして、電子的監視方法により追跡され、電話によるチェックを受ける。この期間中、感染者は健康と安全を注意深く監視され、24時間対応の遠隔医療サービスへのアクセスが提供される。また、発症9日目にPCR検査を受け、結果が陰性であるか、ウイルス量が非常に少ない場合には、隔離を終えることができるかどうかを判断される。すべての家族がワクチン接種を完了し、自宅で隔離を受け、感染の可能性を早期に検出するために、毎日抗原迅速検査(ART)を受ける必要がある。
入国者に対する慎重な国境の再開
8月6日、関係省庁タスクフォースは、条件が許せばより多くの渡航を推進するために水際措置を段階的に見直していくと発表した。シンガポールの高いワクチン接種率は、パンデミックをうまく制御し、国民の大多数へのワクチン接種を行った国/地域からの渡航者に、ワクチン接種の有無に応じた水際対策を導入するための基盤となっている。
第一のステップとして、水際対策のために国/地域の分類が行われた。シンガポール入国前21日間に渡航歴のある国・地域を4つのカテゴリーに分類し、各々異なる水際対策を規定。渡航者が異なるカテゴリーの国/地域を訪問または通過する場合、それらの国/地域の中で最も厳しいカテゴリーの要件が適用される。更新された分類は、関連する要件とともに、Annex BおよびSafe Travel websiteに記載されている。
カテゴリーI
カテゴリーIの国/地域からの渡航者は、Stay-Home Notice(SHN)を受けることなくシンガポールに入国することができる。渡航者は到着時にCOVID-19のPCR検査を受検し、陰性の場合はすぐに活動を始めることが可能。8月19日現在、中国本土(江蘇省を除く)、ニュージーランド、台湾の国/地域が対象。香港とマカオについては、COVID-19の感染状況を確認の上、8月20日23時59分からこのカテゴリーに追加される。詳細は、Annex Cを参照の事。
カテゴリーII
カテゴリーIIの国/地域からの渡航者は、自分が選択した宿泊施設で7日間のSHNを受ける必要がある。シンガポール国民、永住者、および長期滞在パス保有者は、条件が整っている場合、自宅で7日間のSHNを行うことが可能。現在、中国本土(江蘇省)のみがこのカテゴリーの対象となる。オーストラリア、カナダ、ドイツ、ブルネイについては、COVID-19の感染状況を確認の上、8月20日23時59分からこのカテゴリーに追加される。
カテゴリーIII
カテゴリーIIIの国/地域からのワクチン未接種の渡航者は、SHNの専用施設で14日間のSHNを受ける必要がある。完全にワクチン接種を終えた渡航者*は、Annex Dの基準を満たしている場合、SHN専用施設ではなく、自分が選択した適切な場所で14日間のSHNを受けることを申請できる。現在、オーストリア、イタリア、ノルウェー、大韓民国とスイスがこのカテゴリーの対象。ベルギー、デンマーク、日本、ルクセンブルグについては、COVID-19の感染状況を確認の上、8月20日23時59分から、このカテゴリーに追加される。
カテゴリーIV
上記以外のすべての国/地域(現在入国が許可されていないバングラデシュ、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカを除く*)からの渡航者は、SHNの専用施設で14日間のSHNを受ける必要がある。また、渡航者はAnnex Bに示されている検査を確実に受けなければならない。
ワクチン接種済者用トラベルレーンの開始
上記の施策に加え、政府は新たにワクチン接種済者用トラベルレーン(Vaccinated Travel Lane:VTL)を開始する。ワクチン接種を完了した渡航者に対する水際措置を緩和することで、シンガポールへの渡航が可能になる。まずはブルネイとドイツとの間においてVTLを試行。SHNの代わりとして、VTLに基づくワクチン接種済み渡航者は、シンガポールへの出発前48時間以内に受ける出発前PCR検査、シンガポール到着時における到着時PCR検査、更にシンガポール滞在中3日目と7日目に2回(シンガポールを出国していない場合)PCR検査と複数回の検査を受ける必要がある。
VTLによる渡航者が利用可能なフライトはVTL専用フライトのみであり、渡航者数が制限される。VTLの渡航者は指定された直行便でシンガポールに渡航しなければならない。
VTLでの渡航を希望する短期滞在者および長期滞在パス保持者は、シンガポールへの渡航前、入国予定日の7~30日前にワクチン接種済者用トラベルパス(Vaccinated Travel Pass)を申請する必要がある。9月8日以降にシンガポールに入国するためのVTPの申請は、2021年9月1日から受け付け開始。シンガポール国民及び永住者でワクチン接種済みの帰国者はVTPの申請は必要なし。詳細についてはシンガポール民間航空庁が公表する。
海外でのワクチン接種の有効認定について
現在、ワクチン接種の有無に応じた安全管理措置の適応を受けることができるのは、シンガポール国民、永住権保持者、およびシンガポール政府の予防接種記録システム(National Immunisation Registry(NIR))に接種記録が登録された長期滞在パス保持者のみである。その他のすべての渡航者は、MOHが承認した検査機関でイベント前検査(PET)を受け、陰性であることが確認されなければワクチン接種の有無に応じた安全管理措置は適用されない。
8月20日23時59分から、海外で世界保健機関の緊急使用リスト(WHO EUL)掲載のワクチンを接種し、有効な英文記載のワクチン接種証明書を提出できる新規入国者に対して、シンガポール移民検問庁(ICA)はワクチン接種済みステッカーを発行する。これはパスポートに貼付され、改ざんできない仕組み。渡航者はステッカーが貼られたパスポートを提示することで、ワクチン接種の有無に応じた安全管理措置の適用を受けることができる。このステッカーを取得するためには、渡航者は到着時にシンガポールの入国審査に於いてICA職員に英文記載のワクチン接種証明書を提示する必要がある。
ワクチン接種プログラムは次の段階へ
シンガポール政府は、今後も新型コロナウィルスや新たな変異株が発生した場合にも国民が十分に保護されるように計画を進行中。新型コロナワクチン専門委員会は、ワクチンのブースター接種に関する国内外のデータを検討・注視し、シンガポールのブースター戦略に関する提言を作成している。
専門家委員会は、ワクチン接種を完了したにもかかわらず、ワクチンに対する免疫反応が弱い重度の免疫不全者のような特定のグループの人々の免疫反応を高める必要性についても検討している。このようなグループに対しては、3回目のワクチン接種を行うことでメリットが得られる可能性がある。専門家委員会は、近く提言を出す予定。