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政治

2018年2月21日

予算案:GST引き上げは21年以降、国民にお年玉=新年度予算案

ヘン・スイーキアット財務相は2月19日、4月から始まる2018年度の予算案と税制改革を国会に提出した。医療、インフラ整備、安全保障のための支出は増加し、歳入確保が必要になるため物品・サービス税(GST)を7%から9%へ引き上げる方針を示したが、引き上げ時期は21~25年の間とする。低所得層を考慮し、段階的に引き上げる。

 

GSTの適用範囲も広げる。20年から、海外に拠点があり、シンガポールに拠点を持たない事業体から個人、法人が輸入サービスを購入する場合もGST納入義務が生じる。

 

GSTは、会計サービス、ITサービスなど企業間取引および動画や音楽のストリーミングなど企業対消費者間取引の両方に課す。

 

住宅購入者に課す印紙税は3%から4%へ20日付で引き上げる。価格が100万Sドル(約8,124万円)以上の物件が対象。

 

17年度予算の黒字は、過去30年で最高の96億Sドル(約7,799億円)に上った。金融管理庁(MAS)からの寄与、印紙税収入が予想以上だったためだ。このため政府は21歳以上の国民全員に、収入に応じ100Sドル(約8,120円)、200Sドル(約16,250円)、または300Sドル(約24,400円)をお年玉として支給する(通貨単位は全てSドル)。

 

黒字のうち50億ドル(約4,062億円)は新設の鉄道インフラストラクチャー・ファンドの積立金とし、将来の鉄道建設に利用する。

 

革新的経済の構築、産業界の転換支援では、新たな解決手法の採用をさらに企業に促す。

 

新年度は800億ドルの拡大予算、赤字はGDPの0.1%
18年度も前年同様の拡大予算となる。歳出は8.3%増の800億ドル(約6兆4,993億円)、経常収入は3.3%減の727億ドル(約5兆9,062億円)の見込みで、基礎収支は6億ドル(約487億円)の赤字を予想している。運輸省、通産省、および治安関係の支出が増える。省別で最大の予算は国防省で148億ドル(約1兆2,024億円)。

 

2位は運輸省で50%増の137億ドル(約1兆1,130億円)。クアラルンプール・シンガポール高速鉄道、ジョホールバル・シンガポール快速鉄道、また国内鉄道、バス資産の更新で費用が掛かるためだ。

 

内務省の歳出は12%増の65億ドル(約5,281億円)。警察隊の能力強化、テロの脅威に対処するための能力開発など、治安関係支出を増額する。

 

特定目的に使用のための信託基金への積み立ては73億ドル(約5,931億円)(うち50億ドル(約4,062億円)は鉄道インフラ・ファンド向け)を予定。

 

GST(物品・サービス税)が低所得世帯へ与える影響を軽減するための措置「GSTバウチャー」基金に20億ドル(約1,625億円)を積み立てる。国営投資会社からの投資リターンは159億ドル(約1兆2,917億円)を見込んでいる。

 

17年度の経常収入は751億5千万ドル(約6兆1,053億円)、支出は739億2千万ドル(約6兆53億円)の見込み。投資リターンからの拠出が146億ドル(約1兆1,861億円)で、収入面は当初見込みを上回り、支出は見込みを下回った。

 

信託基金への積み立て(40億ドル(約3,250億円))と投資リターンを除いた基礎収支は10億ドル(約812億円)の赤字になる。

 

各省予算(合計)の前年度比増加率はこれまで、国内総生産(GDP)増加率の0.4倍としてきたが、新年度から0.3倍に抑制する。

 

医療支出の増大がGST引き上げの根拠
ヘン財務相は予算案読み上げでGST(物品・サービス税)について、歳出の抑制、インフラ整備のための借り入れなどあらゆる措置を講じても、医療費の増大で21年以降は歳入不足に陥ると強調。GST引き上げは不可避との認識を示した。

 

保健省予算は11年度(39億ドル(約3,168億円))と比較して新年度は2倍強の102億ドル(約8,287億円)。高齢者の数は30年までに45万人増の90万人になる見通しで、政府は総合病院、地域密着型病院、外来診療所、介護施設、ケアセンターを増設する。

 

海外拠点の業者にもGST、別名「ネットフリックス」税
シンガポールは豪州、欧州連合、日本などにならい、海外から提供されるサービスにもGST賦課を決定した。

 

適用を受けるのは、売り上げが年100万ドル(約8,124万円)相当以上で、シンガポールでの売り上げが10万ドル(約812万円)以上の業者。オンラインDVDレンタル、映像ストリーミング配信会社の米ネットフリックスを念頭に置いた税のようで、英字紙では「ネットフリックス税」と呼称している。

 

適用対象の業者はシンガポール税務当局に届け出を行い、GSTを内国歳入庁(IRAS)に代わり徴収しなければならない。

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