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2004年8月16日

『オリンピア ナチスの森で』沢木耕太郎

photo-15この原稿を書いている時点ではまだ開会前だが、今はアテネでオリンピックが開催されている筈だ。個人的には年々派手になる開会式など見たくもないが、アテネ大会もそれ以前の大会同様商業主義の塊のようなオリンピック大会になっているだろうと予想している。一方で、かつては国家がプロパガンダとしてオリンピックを利用したこともあるのをご存知だろうか?ナチス・ドイツの首都ベルリンで開催された第11回大会がその代表だろう。

ベルリン大会については、今なおドキュメンタリーフィルムの最高傑作にあげられる、ダンサーであり女優であり映画監督でもあり、晩年は写真家でもあったレニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」と「美の祭典」を通して見ている方も多いだろうと思う。著者は本書で、そのレニとベルリン大会を描いている。

「民族の祭典」でも見ることができるように、多くの日本人選手がベルリン大会で活躍し、1970年代生まれの私でも知っている選手は多い。NHK河西アナの「前畑ガンバレ!」の絶叫中継で知られる前畑秀子、銀と銅のメダルを半分に切ってつなぎ合わせた友情のメダルの逸話で知られる西田修平と大江季雄、日本人としてマラソンを走ることを強いられた朝鮮出身の孫基禎、彼らはベルリン大会に出場していた。

サマランチやカール・ルイスだけが悪いとは言わないが、商業主義に陥る前の、選手が凛としていた時代のオリンピックを、本書を通じて楽しむのも悪くない。たとえそれがナチスの威信をかけた大会であったとしても。

 

集英社

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.007(2004年08月16日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見

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