一方、姉のエリは病気でもないのに2ヵ月も寝続けている。この姉妹は、お互い嫌っているわけではないのに、なぜかうまく分かり合えない。マリ曰く、言葉がうまく届かないという。
人と人が分かり合うのは、時に難しい。まるで、テレビの向こう側の人と話をしているように感じたり、他人の携帯にかかってきた電話を取ってしまったような気分になったりすることもある。しかし逆に、不自由な外国語で話しているのに心が通い合うような事もあるのだ。
この小説は「私たち」という視点で展開される。読者は作者と同じ目線に立たされ、作品を通じてこの世界をのぞくカメラとなる。まるで防犯カメラで覗いているかのように。他人に観察される事無く生きていることはできない。逃げる事もできない。そんな怖さも感じられる。
講談社