本書の前半は、RX-8開発の物語が占める。RX-8とは2003年に発売された4ドアスポーツカー。当初技術者たちは経営側から提示された4ドアという条件に難色を示したが、次第に理解して技術的な難題を次々にクリアしてゆく。著者はここでマツダの技術力を証明し、マツダに足りなかったのはブランド戦略であったことを強調する。
後半ではフォード傘下でいかに再建を図ったかが語られる。90年代初頭、「ユーノス」「アンフィニ」といったブランドを販売店に冠し、拡大を図ったが失敗。これにより「マツダ」ブランドが希薄となった。そこでフォードは、販売店の再編や車種の絞込みによってブランドの確立を図る。マーケティングの専門家である著者はマツダ車のファンでもあり、随所にマツダ車への愛が感じられる。最後にRX-8の宣伝に関して苦言を呈しているが、これはまるで愛のメッセージのようでもある。
日経BP社