「太平洋」は世界三大大洋の筆頭である。日本はこの世界一の大海に南北3000kmにわたって接しながら、有史以来それに関心をもつことが少なかった。日本列島の住民の目は絶えず西方に向けられ続けてきた。その結果太平洋はほとんど省みられることがなかった。
本書は長年ラテンアメリカ研究に従事してきた著者がこのような反省を踏まえて執筆した太平洋を知るための格好の入門書である。先史時代以来ヨーロッパの航海者たちよりもはるか以前に、太平洋の島々には東南アジアから小さな舟で渡来し居住した人々がいた。おそらくは南アメリカまで達していた。太平洋本来の住民の歴史から説きおこし、西欧列強による探検、植民地化、帝国主義分割、そしてアメリカの核基地化した現在にいたるまでの歴史が描かれている。
更に著者は日本が太平洋諸国を見るときに欠いてはならない視点を最終章で提示している。
集英社新書