但し、ミステリーとしては二流。描き切れていない部分が多く、最後まで明らかにならない点が多い。古賀や間宮、会田、高見など、描きようによっては非常に魅力ある人間を登場させているのに、十分な人物描写ができていない。大掛かりな犯罪を絡めずにディーラーたちの世界を描くことに特化して物語を紡ぐことができていたら、もっともっと面白い小説になっていたかもしれない。
ちょっと手厳しくなってしまったが、最初に言ったように決して面白くないわけではなく、馴染みのない世界に少し触れてみることができる小説、それがこの「日本国債」だろう。
講談社